家族の記憶となる光

20代の若夫婦のための住宅。奥様が幼少時代を過ごし、親から譲り受けた昔ながらの長屋を建替えて、新しい家族の生活を始めようとしていました。ご夫婦の要望は、明るい家。明るいというのはしごくまっとうな要望なのですが、これを実現することが難しかったのです。長屋は建て替えるに当たって少しでも家を広くと、3階建てにすることが多く、3階だけはせめて明るくして、1・2階は真っ暗という家が多いのです。しかも敷地は南・北・東面を家に囲まれ、西面の前面道路も狭隘で、採光条件としてはこれ以上無いくらいに悪い。そこで、トップライトからの光を中心にした生活を提案することにしました。トップライトは前面の道路から敷地の奥まで、建物の長手方向全てにわたって設けています。2階の廊下部分をアクリル床として、1階まで光が届くようにしました。今、ご夫婦は光の変化だけではなく、夕暮れの紫色の空や、台風時の雲の流れや、雨が流れる様を眺めて楽しんでいるとおっしゃっています。部屋は時間の経過とともに生活感で充満するでしょう。しかし、それでもこのトップライトからの光は、生活の変化に関わりなく、同じ光を家全体に注ぎ続けるのではないかと思います。長い時間の中でそんな記憶を家族が共有できること、これも心地よく暮すということの本質のひとつではないかと考えています。

Information
建築地大阪府大阪市住之江区
主用途住宅
構造木造
規模地上2F
竣工年2005年3月
備考E・家・くらし 住まいの設計コンテスト佳作