比較的長い年月での社会の変化や、日々刻々の日常的変化を許容する包容力を持ち、かつ建物の永続性を支える確固とした存在感を持たせるにはどうしたらよいか。長い年月使われ続けた建物には、様々な異なる次元を持った要素がコラージュのように折り重なっています。そして大切なことは変化の積み重ねとは全く別次元のタイムスパンを持った、それらを包容するかのような骨格が存在することです。例えば古民家の小屋組やバシリカ式教会のクリアストーリーより上部のように。敷地は北側正面に商店街があり、南側に阪急芦屋川のホームが隣接するL字型の土地。木の架構、列車が疾走する駅のホームの情景、物販やカフェの賑わい、商店街の街並み、人通り、太陽光等々、様々な要素が重なり合うように取り込まれます。この変化に富んだ重なり合いが、日常の変化や建物の使われ方の変化がさらにコラージュされていく基盤となり得、また許容する変化の幅も大きくするのではないかと考えています。一方、木による小屋組はそれらの変化とは別次元の様相をなしている。物販の小屋組は、モノが置かれ人が行動する高さからは切り離され、変化せず存在すると同時に2階のテナント部分の小屋組みへと続く連続性を形作る。この小屋組みが建築としての存在感を失わずに変化を許容する、強い象徴的骨格となると考えています。

壽耕舎

建築地兵庫県芦屋市
主用途カフェ・物販・テナント
構造RC造
規模地上2F
竣工年2009年11月
備考なし
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