施主はグラフィックデザイナーであり、また輸入雑貨店を営んでいます。それまで住んでいたマンションに招かれたときには各部屋の至る所に輸入雑貨があふれかえり、モノと共に暮らしているという感じでした。それは決して不愉快な空間ではありません。愛情をもって集めてきた存在感のある雑貨に満たされ、取り囲まれ、幸福感に満ちた場所だったのです。ただマンションの面積では限りがあり、モノたちとの幸福な関係も限界に来ているということなのでした。とはいえ、新築の家を作ったからといって、モノが増えてゆけば近い将来同じような問題が起こってきます。床面積を確保するだけで解決する問題ではないと思われました。そこで、主にモノが集まってくるリビングの天井高さを、極端に高くすることを提案しました。モノや人が戯れる床の上空に、そこから開放された光と空気だけの空白部分。念頭にあったのは、ヨーロッパの教会や図書館の縦方向に大きなボリュームです。教会や図書館は、そこに多くの人やモノが集まってきているにも関わらず、不思議と静けさを感じ全てがやわらかく秩序付けられている感じがします。

芦屋K邸

建築地兵庫県芦屋市
主用途住宅
構造RC造
規模地上2F
竣工年2005年7月
備考なし
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